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命を矜持を矢玉に賭けて――『鎧光赫赫』

『狼の口 ヴォルフスムント』の久慈氏が、連載前に各所で描いてきた作品を集めた短編集。
 雑賀衆をモチーフにした一連の戦国戦闘物語など、情念が込められた戦いと人生の物語を中心にしつつ、「舞子プラズマ」名義で描かれた「エマ」アニメの宣伝漫画「舞子の部屋」の前のめりのギャグが異彩を放っております。

 中でも「千草峠の風」と表題作が好き。
 信長を狙撃した人物・杉谷善住坊を主人公に据えた「千草峠の風」。家も女も友も捨てて鉄砲の腕前を高めることのみに腐心してきた男が放った人生の全てを賭けた一発と、それが招いた結果に対しての吐き出される男の叫び。
 非人間的なまでに一事に研ぎ澄まされた人生。その人生に対する男の矜持が、実に人間的な熱を以て、火を噴くような情念と叫びによって吐き出されるのに圧倒されます。


 そして「鎧光赫赫」。
 圧倒的な武力を誇る豪傑に挑む小兵の鎧武者の闘い。傲岸不遜の槍さばきに抗する小兵の武者、アクションとして目を惹くシーンの連続ですが、決着が付いて武者の正体が明かされた瞬間の清涼感と、その後の生の感情むき出しの対比が生々しくも鮮やか。


 無慈悲な描写を交え、行き場のない怒りを抱えた人物達が、闘いの中で吹き上げる情念の炎とその熱に当てられる作品があつまっております。

 その裏にキャラクターをとにかく酷い目に遭わせずんばあらず、的な業が感じられて、それもまた素晴らしい情念であるなあ、と。

関連記事:『狼の口 ヴォルフスムント』感想

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(2010/04/15)
久慈光久

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姉御肌女子高生&幽霊少女のバディ物。あと尻。な『真昼に深夜子』1巻

「fellows!」連載中、動きのあるポップでカッコイイ画が大変に気持ちいい宮田氏の初単行本。
「ネコを捕まえろ」「冴えない少年の恋の想いを遂げさせろ」「弱小野球部に勝利を」などなど、身近な、しかし一筋縄ではいかない指令に挑む二人。毎回毎回、バラエティに富んだ趣の異なる指令に、青春の一幕、恋愛劇、アクションありと異なるアプローチで挑む二人の姿が飽きさせません。

ちょっと荒っぽいけど根は真っ直ぐで純情な真昼と、ちょっとヒネた感じもある深夜子、肉体派実行係・頭脳派計画係のこの二人のコンビ。
深夜子が半ば謀る形で真昼を引っ張り込んだ形で組まされたコンビではありますが、バカみたいにストレートな真昼の言動が、ちょっとヒネた深夜子の心に届いて徐々に二人の関係が変わっていく様もまた面白い。
なにやらその死に複雑な事情を抱えているような幽霊少女・深夜子ですが、はてさて一体何があったのでありましょう。

 この主役二人以外にも、神様ババアや真昼の舎弟達も憎めないイイ味出してます。 

 そして、宮田氏と言えば尻。尻と言えば宮田氏。この『真昼に深夜子』も素晴らしい尻ですな。「2010年このお尻がすごい!」の1位候補ではなないでしょうか。この健康的でボリューミーな張りのある尻はたまらんものがあります。

 しかし、ビームで連載していた『ききみみ図鑑』は単行本になりませんかのう。てっきり一緒に単行本化されるとばかり思っておりましたが。こっちの単行本化も信じて楽しみに待ってますよエンターブレインさん!

真昼に深夜子

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(2010/02/15)
宮田紘次

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

希望を摘み取れ――『狼の口 ヴォルフスムント』1巻

 14世紀初頭アルプス地方。オーストリアのハプスブルグ家に対し、現在のスイスの前身に当たる自治邦が抵抗を続けていた時代。
 伊独を結ぶ交通の要衝であるザンクト・ゴットハルト峠に築かれ、何者も通さぬ砦、通称「狼の口(ヴォルフスムント)」。何とかしてそこを通ろうとする者達と、その望みを打ち砕く砦の番人・ヴォルフラムの攻防の物語。

 逃避行の中、危地に挑む男女。それを阻もうとする狡猾な役人。ああ、勧進帳の欧州バージョンなのか……と思っていた自分の読みのぬるさを思い知らされた第1話の衝撃たるや。

 故郷のため、主のため、命をかけて何とか「狼の口」を抜けようとする者達。工夫を凝らし、持てる力の全てを以て挑んでいるのに対し、それを嘲笑うかのようにいたぶり、かみ砕く「狼の口」。優男の面に薄い笑みを浮かべながら女子供関係なく処刑していくヴォルフラム。

 次々に希望が潰え、死体が積み重なっていく様は無惨極まりないのですが、しかしそれを前にしたヴォルフラムの薄い笑みに、暗くサディスティックな共感を覚えるのは私だけではないはず。
 相手が気高ければ気高いほど、工夫を凝らせば凝らすほど、絶対的な優位性から相手をなぶり、踏みにじり、その怒りと恨みを見聞きする甲斐があり、背負った使命や想いが貴いほど壊し甲斐があるという。
 ――であるからこそ、そういうヴォルフラムは斃されるべき者としてその存在感を増していくという。
 
 歴史ではやがて自治邦同盟がハプスブルグ家の軛を脱し、自由を獲得していくことになりますが、今はまだ難攻不落の砦として傲然と聳え立ち続ける狼の口。
 そこを突破する者が出てくるのか、出るとしたら、それまでにどれだけの犠牲の物語がさらに重なっていくのか――
 強烈にお奨めの一冊。是非に是非に。

狼の口

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
(2010/02/15)
久慈光久

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

私たちはまだ始まってすらいねえよ! ――『演劇部5分前』1巻

 「ビーム」に読切りが掲載されていた頃から大好きだった百名氏の「fellows!」連載作が単行本化。やったね!

 女の子3人、アホな事ばかりやっている、実績ゼロ演劇部が廃部を前にして、本格的に演劇を始動!

 弱小部が身の丈に合わない目標を掲げて努力を始める、そんな部活モノの王道の始まり。

 ――なのですが、主人公3人は既にもう3年生(更にうち一人は留年者)。しかも演劇をきちんとやると志したものの、3人とも微妙に演劇に対する温度差があって、ぎくしゃくしてしまって、そしてやっぱりバカなことばかりやってしまって、やっとなってくれた顧問もダメな人。
 と一体どうするんだコレ……的な前途多難すぎる始まり。

 そんな3人の所に演劇を真面目に志す経験者の少女が入ってきて、少しずつ歯車は噛み合い「らしく」なって来ますが――。


 技術と才能と知識の問題、仲間としての友情、そんな部活モノとしての展開をしつつも、卒業を前にして部活動に全力投球という無茶な状況があるわけで、自分の進むべき道に対する不安や焦り、他者のそれに対する憧憬、そんなもを織り交ぜた道標無き若者達の手探りの物語でもあり。
 部活動に真っ直ぐに勤しむ姿勢の爽やかさと、時折それを大きく崩すアホな言動。このあたりが短編で見せた百名氏の味だなあ、と。

 5分前、のタイトルの通り、未だ「演劇部」としてすら始まっていない状況下で、4人がどうなっていくのか、彼女達が演じる劇はどのようなものになるのか見届けたいと思います。

 アホで技術も知識も無い、しかしなにやら光るモノがあるらしいアッコ。教導役の演劇少女・矢野との対比がこれからの鍵と思われますが、才能と積み上げの簡単な対比の物語にはなって欲しくないな、とも同時に。

演劇部5分前

演劇部5分前 1巻 (BEAM COMIX)演劇部5分前 1巻 (BEAM COMIX)
(2010/01/18)
百名哲

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

寄る辺なき者たちの奇妙な共同生活――『ノラ猫の恋』1巻

 蒸発した父親を探しに青森までやってきた娘・ななの前に現れたびは、その父親の恋人だというオカマ・清。そこに父親の後輩を名乗る若者・澤が現れて――。
 三人を繋ぐ父親不在のまま始まった奇妙な共同生活を描くホームドラマ。

 女子高生と、オカマと、一見人当たりの良い青年。
 年齢も、性別も、社会的立場も異なる、面識さえ無かった3人の共同生活をつなぎ止めるのは、それぞれが持っているななの父親に会わなくてはならない理由。

 不信感を抱き、探り合いをしつつも、何となくうち解けていく様子がものすごく面白い。知らない土地の、父親不在の家が、他人だった3人居場所として少しずつと機能していく様が丁寧に描かれていて、その居場所はとても不安定でアンバランスなんだけれども、何だかいいなあ、と思ってしまいます。、

 そして、剣呑な対応をしながらもちゃんと優しい清さんが本当にいい女(男?)だなあ、と。ななを見守る眼差しがとてもいい。

 そんなちょっといい空間が出来上がりつつも、二人を呼び出した父親の手紙は一体何だったのか、清と父親との関係は一体何なのか、澤の本当の目的は何なのか、そもそも父親はどこに行ってしまったのか、様々な謎を孕んでいて、寄る辺なき三人の関係の行く末が気になります。

ノラ猫の恋

ノラ猫の恋 1巻 (BEAM COMIX)ノラ猫の恋 1巻 (BEAM COMIX)
(2009/12/16)
長野香子

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風呂で繋がる古代ローマと現代日本――『テルマエ・ロマエ』1巻

 2世紀前半、ハドリアヌス帝治世末期のローマ。浴場の設計に情熱を傾ける建築技師のルシウスが出会ったモノとは――

 古代ローマの風俗史・文化史的なものを漫画でやるのかー、と思ったら予想も付かない衝撃の展開が。

 この題材で、このディティールで、この絵柄で、こんなバカな話をやるヤツがあるか!(褒め言葉)
  ――と「ビーム」に掲載されたときの鮮烈な衝撃は今もはっきりと覚えております。

 古代ローマ人が現代日本にタイムスリップして、風呂に関する技術や文化に触れてショックを受ける、という。ルシウスさんの職人らしい生真面目さと、彼を見る日本のジジババ連中のギャップが何ともユーモラスでバカバカしくて、笑ってしまいます。

 本当はネタバレ無しで衝撃を受けて貰いたい作品ですが、まあ、帯に全部書いてあるからいいのかな。兎も角も素敵にユニークな作品。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
(2009/11/26)
ヤマザキマリ

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魔法使い一家の素敵でささやかな日常――『乱と灰色の世界』

 『群青学舎』の入江亜季氏の新作は、魔法使い一家が主役のファンタジー・ホームドラマ。
 靴を履くと美女に変身する(靴のサイズに合わせて変身する?)少女・乱の身の回りで起るあれやこれやを描きます。

 ナイスバディな美女に変身しても、中身は子供のままの乱。彼女の見た目と言動のギャップが愉快だったり、ハラハラしたり。そんな乱に手を焼くお兄さん、苦労性のお父さんの気持ちが分かります。
 色っぽいお姉さんなのに、好奇心いっぱいのキラキラした目をする乱に魅了されてしまいそう。

 そしてやっぱり今作でも入江氏の画が素敵。
 ちんちくりんだった乱が美女になる様とか、お母さんが魔法で色々な楽しいものをポンポン出していく様とか、オオカミになったお兄さんとか、全てが魅力的。

 苦労性のお父さんとお兄さん、離れて仕事をしているお母さん、妙な出会い方をした鳳太郎、学校での生活、色々な人々に囲まれて、ちょっと人とは違う力を持った乱にとっての世界は果たしてどんなものになっていくのか。
 ちょっと不思議な風合いを持った舞台設定とともに興味が尽きません。

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)
(2009/11/16)
入江 亜季

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イヌジニン・ブラステッドの原点――『海岸列車』

 手違いによってヤクザに夫を殺された老婆が、復讐のために銃を手にする――。

 描きようによっては、一発ネタ、或いはアクションコメディとしても成立させられそうなこのプロットですが、表題作が描くのは理不尽に耐えた弱者の抵抗の物語として。

 夫を失って失意に沈む老婆と、学校でいじめに遭っている孫。色々な感情を押し殺して理不尽に耐えた末に、静かに強い意志を込めての行動。その結果は決して幸福な未来は招かないのでしょうれども、どこか清々しさがあります。どこか晴れやかで、でも哀しさを湛えるラストがとても印象的。

 という、昨日も紹介した『ブラステッド』の室井大資氏の短編集。デビュー作であり表題作でもある「海岸列車」について触れましたが、他にも子だくさん一家の長女のを描いた「マーガレット」が好き。

 しかし、本当に色々な引き出しのある人ですね。これからの作品も楽しみにしています。

海岸列車 (BEAM COMIX)海岸列車 (BEAM COMIX)
(2009/11/16)
室井 大資

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暴力は人生を斟酌しない――『ブラステッド』1巻

 暴力団の末端でクラブ経営などの表の顔を見ていた男が巻き込まれていく暴力の渦。
 いきなり転がる生首からの幕開け、死体処理や殺人、虐殺、一人の男の小さな人生の意味など斟酌せず、次々と連鎖していく圧倒的な暴力の描写。

 非人間的なまでに次々と人生を上塗りしていく裏世界の暴力の嵐の中、その力の赴くままに流されるしかない主人公の道行きは重苦しい絶望と諦めに満ちていています。

 否応もなく巻き込まれた暴力の中で見てきたもの、出会い、そして巻き込んだものの末に男は傍観者の立場から当事者へと。

 嫌な話満載なのにぐいぐい引き込まれる力強い描写と物語。これはやはり凄いなあ。
連載で読んでいるよりも単行本でまとまるとその感が一層強くなります。

『イヌジニン』もすごい作品ですが、こっちもすごい。
 同時発売の『海岸列車』もすごい。
そして『妖怪研究家ヨシムラ』を描いているというのもすごい。

ブラステッド 1 (BEAM COMIX)ブラステッド 1 (BEAM COMIX)
(2009/11/16)
室井 大資

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テーマ : オススメ漫画
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棘叢庵主人凡鳥でございます。
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