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何かを乗り越えたその先に生まれる希望――『冬の終わり、青の匂い』

 『演劇部5分前』を連載中の百名哲氏が「ビーム」「fellows!」などで発表してきた作品を収録した短編集。

 氏のデビュー作となった「ばかねこ」。
 想いを寄せていた男に押しつけられた喋るネコ。無用のバカバカしい心配ばかりのそのネコとともに、もう来るはずのない男を心のどこかで諦めきれずに待っているOL。
 デビュー作ゆえの荒さ、みたいなものもありますが、しょうもない存在だけれどどうしても憎めないばかねこのいじらしさと、そこに寄り添うOLの心情がジンと沁みる一作。これを読んで百名氏の作品は追いかけなくちゃ、と「ビーム」掲載時に強く思いました。

 「サムライ戦隊ブシドーファイブ」
 もうすぐ終わりを迎える戦隊モノの収録現場。プロデューサーの人柄のお陰で家族のような絆が生まれたチームの中で、駆け出しの女優が感じる寂しさと、彼女がとった行動――とその末に迎えた最後の収録。
 役者とスタッフのやりとり一つ一つから「ああ本当にいい現場だったんだろうなあ」と思わせる描写。楽しいことも辛いことも含め、居心地の良かった場所から巣立つ際の葛藤を経て、一皮むけて少し大人になった彼女の後ろ姿がとても眩しい。

「桜の頃」
肉親が起こした事件のせいで虐められ続けた高校時代を過ごした少女・沢さん。卒業式のあと、無理矢理グループにさせられていたキモ男子達と彼女の間で起ったイベントとは――?

 どうしようもない阿呆な、手段を間違えたキモ男達でのアプローチでしたが、しかしこれ以上無いくらいに真摯でナイスなものでありました。高校生活の最後の最後で沢さんにいい思い出ができて良かった。本当に良かった。

 あと「桜の頃」の沢さんもそうですが、百名氏が描く切れ長の目の女性がすごく好きです。「聴こえてくる歌」の杉山アナとか、『演劇部5分前』の矢野さんとか。


 共通するテーマとして、ちょっと不器用な人たちが、心の中に蟠っていたモノを乗り越えて一歩踏み出したその場面、というのを描いた作品にとても心を揺さぶられます。
 ちょっと切なかったりしつつも、その姿がなんだか眩しく見えたり、その乗り越えたあとの表情やその場の空気が、ああ大丈夫なんだ、と頼もしく感じます。
 挫けたり立ち止まったりしても、人は前に進むべきなんだなあ、と夜明けの薄明の如き小さいながらも力強い希望を感じさせる作品集です。

■関連既刊感想
『演劇部5分前』1巻

冬の終わり、青の匂い (ビームコミックス) (BEAM COMIX)冬の終わり、青の匂い (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
(2010/05/17)
百名 哲

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