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希望を摘み取れ――『狼の口 ヴォルフスムント』1巻

 14世紀初頭アルプス地方。オーストリアのハプスブルグ家に対し、現在のスイスの前身に当たる自治邦が抵抗を続けていた時代。
 伊独を結ぶ交通の要衝であるザンクト・ゴットハルト峠に築かれ、何者も通さぬ砦、通称「狼の口(ヴォルフスムント)」。何とかしてそこを通ろうとする者達と、その望みを打ち砕く砦の番人・ヴォルフラムの攻防の物語。

 逃避行の中、危地に挑む男女。それを阻もうとする狡猾な役人。ああ、勧進帳の欧州バージョンなのか……と思っていた自分の読みのぬるさを思い知らされた第1話の衝撃たるや。

 故郷のため、主のため、命をかけて何とか「狼の口」を抜けようとする者達。工夫を凝らし、持てる力の全てを以て挑んでいるのに対し、それを嘲笑うかのようにいたぶり、かみ砕く「狼の口」。優男の面に薄い笑みを浮かべながら女子供関係なく処刑していくヴォルフラム。

 次々に希望が潰え、死体が積み重なっていく様は無惨極まりないのですが、しかしそれを前にしたヴォルフラムの薄い笑みに、暗くサディスティックな共感を覚えるのは私だけではないはず。
 相手が気高ければ気高いほど、工夫を凝らせば凝らすほど、絶対的な優位性から相手をなぶり、踏みにじり、その怒りと恨みを見聞きする甲斐があり、背負った使命や想いが貴いほど壊し甲斐があるという。
 ――であるからこそ、そういうヴォルフラムは斃されるべき者としてその存在感を増していくという。
 
 歴史ではやがて自治邦同盟がハプスブルグ家の軛を脱し、自由を獲得していくことになりますが、今はまだ難攻不落の砦として傲然と聳え立ち続ける狼の口。
 そこを突破する者が出てくるのか、出るとしたら、それまでにどれだけの犠牲の物語がさらに重なっていくのか――
 強烈にお奨めの一冊。是非に是非に。

狼の口

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
(2010/02/15)
久慈光久

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

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