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触手マイスターが人生を賭けて描く『人間失格 壊』

 誰もが知っているであろう太宰の『人間失格』を、「チャンピオンRED」の触手マイスター・二ノ瀬泰徳氏が、大胆な解釈と独特の描写でコミカライズ。

 葉蔵が女装させられたり、異形に触手で嬲られたり、そんな二ノ瀬氏テイスト満載な描写も多く、そのあまりにも特殊で突き抜けた描写からイロモノ扱いをされそうな気もしないでもないですが――。
 実はこの作品、驚くほどに真摯に『人間失格』に取り組んでいるのです。いや、本当に。

 生き辛い故に「お道化」の仮面を被って世間を欺き続ける葉蔵。人間を求め、人間を「失格」してしまった彼の生き様を描く筆は、「チャンピオンRED」に掲載された二ノ瀬氏のインタビューや、その作風から、何だか強い自己投影と情念のほとばしりを感じずにはおれません。

 例えば、葉蔵のお道化が仮面であることを見破り、その後事ある毎に彼の前に立ち現れる竹一姫香。
 原作では少年時代の葉蔵の本質を見破った(かに思える)発言をし、彼を大いに動揺させ、またその後の人生に影響を与えた竹一を、美少女として、そして継続的に登場する常ならぬ存在として描き、そしてあのようなラスト直前のシーンを与えたことは、インタビューでの「現実の女性が嫌いなんですよ」との答えに対して、何と象徴的なことか。

 太宰の『人間失格』は、読者の立場や心持ち、読んだ時の状況によって、恐らく受け取るものは大きく変わって来ます。昔読んだ人も時を置いて読めばまた違った印象を受けるはず。
 二ノ瀬氏がこの作品に真摯に向き合うことで、立ち現れたのがこの異形の、そして失格した人間の物語を描いたことは、二ノ瀬氏の中で何か覚悟の完了とか、一つ突き抜けた何事かが生まれたのではありますまいか。

 葉蔵は物語の最後で「今の私には幸も不幸もありません。 ただ、いっさいは過ぎてゆきます」とあまりにも有名な言葉を残しますが、二ノ瀬氏には、ぜひまだこの過ぎゆく境地には至らず、ひたすらに前へ前へと進んで、もっとすごいものを我々に見せていただきたい。
 本当に、期待しております。

人間失格 壊 (チャンピオンREDコミックス)人間失格 壊 (チャンピオンREDコミックス)
(2010/07/20)
ニノ瀬 泰徳太宰 治

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王道の物語と業深い描写――『ケルベロス』1巻

 「崩」とよばれる化物と戦うため、友人達を守るため、「狗骸」雪房と契約を交わし「墓守」という異能の力を揮う存在になった主人公十三塚景。

 『ケルベロス』はそんな異形のバディを得て、異能力者となった主人公が化物とのバトルをしていく由緒正しき血脈の少年漫画であります。主人公の景も、弱きを助ける侠気と優しさ、強い意志を持ったまことに主人公然とした男の子。

 その王道の系譜たるこの作品が他と一線を画すのはは非常にサディスティックな描写、所謂「リョナ」系の描写。
 「崩」に捕まり、涙と鼻水とよだれまみれになりながら恐怖に震える幼なじみ。崩にいたぶられ無惨に引裂かれ、絶望の叫びの中で食われるモブ少女。妹を犠牲に自分だけ助かろうとした卑怯な姉と、その姉を目の前で食われた妹、結局二人とも食われた幽霊の姉妹――などなど。

 演出として何もそこまでせんでも、と思わないでもない、しかし圧倒的なインパクトで迫るこの描写の数々。
 とにかく絶望で歪む女の子達の表情に対して、力の入れ方が半端ではありません。この虐めっぷりはもう愛ではありますまいか、そんな深い業すら感じさせる描写であります。
 これらの「絶望」描写があるから主人公の救出劇や倒したときのカタルシスが映える、というのも勿論あります。が、それだけではない、執拗で本気の女の子への嗜虐性。それを以て負の面の女の子のかわいらしさ――というか命の華が描かれているのは間違いありません。

 堂々たる王道を往く陰にある業の深さ。この業深さが今後どう花開くか、そして物語にどう影響を与えるか。
 ちょっとこの先目を離せないる引力があります。

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(2010/05/07)
フクイ タクミ

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明るく素敵に狂ったラブラブ――『れすきゅーME!』1巻

 「チャンピオンREDいちご」連載、巻田佳春氏の初一般単行本。

 自宅に家政婦としてやってきた同級生の美少女が主人公に猛烈アタックをしかけまくり。そこに年下の叔母(貧乳)まで加わって主人公誘惑合戦が開始。主人公はヒく。

 そんなうれしはずかしラブコメ、或いはエロコメ――と言ってしまうには何か違う、巻田氏独特のかわいい、でもブッ飛んだ妙なノリが全編くまなく充満。「巻田音」もきゅんきゅんと鳴りまくっております。

 何の葛藤も無しに同級生の家政婦をやることになるヒロイン、この時点でだいぶ変なわけですが、それも含めて全体的にヒロインの思考がおかしい。明るく狂っております。でもかわいい。とてもかわいい。
 とにかく罪悪感とか羞恥とかそういうものは一切無しに積極的にHな方向性に突っ走っていくヒロイン達。

 でもラブラブというのとはちょっと違う、かといって淫乱とも違う、配線を一本間違えた甘ラブ、とでも言いましょうか――だって、アタックに主人公思いっきりヒいちゃってるんですもの。愛の暴走列車と化したヒロイン達は、主人公がヒいちゃってるのを余所に、そのズレたラブを一層加速させて行くのでありました。

 サービスシーン激多で、ちゃんとHで女の子は甚だしくかわいい、そのことだけでも素敵ですが、それ以上に、この巻田氏の作品全般に漂う、平然と明るく狂ってるノリが素晴らしいなあ、と思うのです。

れすきゅーME

れすきゅーME! 1 (チャンピオンREDコミックス)れすきゅーME! 1 (チャンピオンREDコミックス)
(2010/03/19)
巻田 佳春

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

カミはバラバラになった! ――『シザーマン』

 開拓時代のアメリカ西部を舞台に、髪の魔女を追って巡回散髪人が行く! ハサミが武器の散髪アクション!

 ――って恐ろしくB級くさいな! しかし無闇にカッコイイな!!
 主人公と魔女の過去の因縁、と一応ドラマはあるものの、主眼はあくまで髪と鋏のアクション&バトル。そしてお色気。
 物腰の柔らかい優男風のイギリス野郎が、女の髪を彼に整える様はエロティックで、しかしひとたび戦いとなれば異形の鋏を振るって鬼神の如く髪を刈りだして行く、という。
 「髪」「鋏」に絡めたこれまたB級臭い言葉遊び的台詞回しも相俟って、実に痛快なエンターテイメントとなっております。

 難しいこと一切無し、バカバカしくもケレン味溢れる散髪アクションのかっこよさをご堪能あれ。

シザーマン

シザーマン (チャンピオンREDコミックス)シザーマン (チャンピオンREDコミックス)
(2010/01/20)
倉田 英之

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

自意識を思考する青春の日々――『え!? 絵が下手なのに漫画家に?』

 色々な所に掲載された原稿を、エッセイ漫画を中心にをまとめた作品集。
 
 学生時代の、異性や周囲の人との関わり合い方・自分の進むべき道への戸惑いを描いた表題作が描くのは、内向的な若者のデリケートな自意識。
 ただその自意識を描くだけならウェットな青春モノになりそうですが、そのデリケートさに気付きながら客観的な思考によって自分を分析することで、静かでどこか乾いた味わいの可笑しさに仕上げてしまうのが施川氏的な味であります。

 その後に収録されているカラスヤサトシ氏との対談も併せて読むと、恋愛だけでなく、何というかそのデリケートさと思考の末の判断が何らかの行動を抑制してしまう、そんな感覚に非常な共感を覚えてしまうのです。文化系の男子なら多かれ少なかれこの感覚は持っているんじゃないでしょうか。
 しかし、これを厭味や暗さ、湿った感じを持たせずに描けてしまうのはとても素敵なことだと思うのです。

え!?絵が下手なのに漫画家に? (ヤングチャンピオンコミックス)え!?絵が下手なのに漫画家に? (ヤングチャンピオンコミックス)
(2009/11/20)
施川 ユウキ

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棘叢庵主人凡鳥でございます。
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