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声に出すことで引き出される物語の力。『花もて語れ』1巻

 『空色動画』でアニメーションづくりの楽しさ、感動、ワクワクを思いっきり描いた片山ユキヲ氏。

 その片山氏の新作が題材に採るのは「朗読」。
 朗読が漫画になるのか? そんな疑問は読み始めた途端にどこかに行ってしまいました。

 主人公・佐倉ハナが出会った朗読の魅力。声が小さくて人前で話したりすることの苦手な彼女が、その「イメージ」の力・声の力で物語の魅力をぐいぐいと引っ張り出していくのです。

 声を出して本を読む。それだけのことがここまで烈しく、熱く、やさしく、人の心を揺さぶる物語として描いてしまうとは!
 読み手のイメージ、そして声によって物語から引き出された「力」が聴く者を強く揺さぶる様子は圧倒的ですらあり、また同時にとても心地良いものでもあります。

 この1巻で扱われる物語は、国語の教科書で強い印象を受けた人も多いであろう宮沢賢治の『やまなし』。「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ」で有名なあれ。 この作品を声に出して読むというのはどういうことなのか、そしてそれがどんな物語を生み出すか、それは読んでのお楽しみ。

 片山氏が描く作品は「感動」を伝える力がとにかく物凄い。そんなことを再確認させられました。
『空色動画』を読んだことのある人はもちろん、未読の方も是非この力強くそして優しい作品を読んでいただきたい。

花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
(2010/09/30)
片山 ユキオ

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普通のおばさん、色々なところに現る! 『高梨さん』

 世話焼きで、妙に行動力があって、料理が上手くて、でも音痴で機械が苦手。
そんな絵に描いたような「おばさん」であるところの高梨さん。
 彼女が様々な場所に助っ人として現れ、微妙な困惑と、微かな安堵を残して見事にトラブルを解決していく様を描くハートフルコメディ。

 時にネコ探しの助っ人として、時に漫画家のアシスタントとして、時に清掃業者の手伝いとして、時に恋のキューピットとして、またある時には不思議な宇宙人との邂逅を果たして。
 ……宇宙人!?

 よく分からないうちにその場に存在している高梨さんが、有無を言わせぬマイペースさでその場を何となく支配。
 全ては高梨さんの善意とおばさん魂とでも言うべきお節介さに発する行動が、何だか憎めなさ全開で迫ってきます。
 場違いなところに「いかにも」なおばさんがいる戸惑い、その彼女の裏表のない(いかにも「おばさん」的な)行動のほほえましさと困った感、しかしがそれがいつの間にやら本人の意志とはまた別の形でトラブルを解決してしまうユニークさに思わず頬が緩んでしまいます。

 微妙に噛み合っていないんだけど、とってもキュートなおばさん「高梨さん」。いいなあ。この人の作る豚汁を是非食べてみたい。

高梨さん (IKKI COMIX)高梨さん (IKKI COMIX)
(2010/05/28)
太田 基之

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佐賀弁で、美少女で、おばあちゃんで、猫。『ミル』1巻

 飼っていた猫が女の子に! そして同居生活!!
 ――そんな設定のお話ですが。

 しかも佐賀弁。お料理も上手。
 なんてキャッチーなキャラ付けか。

 しかし、その設定を見て多くの人が考えるような浅薄なお話ではなく、しみじみと愉快で、そしてじんわりと心に染み入る実にいい話なのです、これが。


 故郷を離れ東京でひとり暮らしをしている大学生の主人公・アキ。彼の元にある日突然少女がやってきた。なんと彼女の正体はアキが実家で飼っていた猫のミルが人に化けたもの。彼女とのちょっと変わった共同生活の始まり。

 見た目は女子高生、しかし長生きした化け猫ゆえに、感性がおばあちゃんのソレなミル。煮物が得意で世話焼きで、ちょっと世間とズレていて、そして佐賀弁。おまけに人なつこい飼い猫の習性と本能も。

 バァさん・猫・女子高生、3属性のハイブリッドなミルの存在は、味気なかったアキの独りの生活に彩りと栄養と笑いを与えてくれますが、アキも単にそれを享受するだけではありません。細かい部分にまで気を遣っているミルを心配し、陰に陽に気遣いを見せます。
 小さなしあわせがたくさんある生活は、お互いを大切に思っているから。楽しいことも、切ないこともあるけれど、全部ひっくるめてお互いの「やさしさ」が幸せに変えていく、そんな物語。
 年上のおばあちゃんだけれども、とても切ない過去も背負っているミル。一緒に暮らしてお互いを知ることで深まっていく絆が笑いあり、涙ありで大変に丁寧に描かれています。

 何だか奇妙な、しかし暖かでちょっと切ない二人の関係。じんわりと暖かいこの関係はいつまでもこうあってほしいな、と思います。是非多くの人に読んで欲しい作品。

 作者の手原氏はこの作品でデビュー、とのことでそういう意味でもこれからが大変楽しみです。

ミル 1 (ビッグ コミックス)ミル 1 (ビッグ コミックス)
(2010/04/28)
手原 和憲

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異形の蟲VS異能の戦闘集団!『ムシブギョー』1巻

 享保年間、江戸の町に巣くう巨大な蟲たち。その蟲退治専門機関「蟲奉行所」に勤務することとなった少年・
月島仁兵衛の戦いと成長の物語。

 爆薬使いのくノ一・火鉢、剣術の達人にして人斬の罪人・春菊、天才少年陰陽師・天間、孤高にして至高の天才剣士・無涯。
 他の蟲退治のエキスパートに囲まれて、ひよっ子扱いに憤慨していた仁兵衛君ですが、美しくも圧倒的な無涯の戦いを見て心底惚れ込み、彼を目標として励むことに。
 この仁兵衛君、馬鹿が付くほどに真っ直ぐで、全くスレたところが無い少年。とにかく前向きな明るさとストイックさを持っております。

 自分の進むべき道をしっかり見据えている、一本芯が通ったブレない姿勢は時に滑稽さを産みますが、ここぞという場面でとにかく雄々しい。熱さと清々しさ(+滑稽さ)、そして成長の余地を兼ね備えた、少年主人公かくあるべし! 的な実に「男の子」しているキャラクターであります。
 先輩方を慕う、真面目さがちょっと煩い後輩ポジションに今は収まっている彼ですが、時にその真っ直ぐさで先輩方をも諭す言動をとる彼、この後どんな成長を見せてくれるのかが楽しみです。

 そして実在の昆虫の姿・生態をモチーフとした異形の蟲の不気味さ、それとのダイナミックな戦闘シーンもやはり見所。
 動く戦闘シーンの必然性として、スカート+ニーソ+締め込み(!)の火鉢さんの健康的なお色気。等身の高いすらっとした女の子の脚線美とチラリズム……いい……。

 こんなに性的な格好の火鉢さんを前にして全くリビドーを動かさない仁兵衛くんはですが、やっぱりこれは彼がまだ子供であるということなんでありましょう。そもそも異性とか全く考えて無くて「先輩!」って感じですし。今は火鉢とともに無涯に対する憧れトークを交わしている仁兵衛君ですが、彼が異性に目覚めるエピソード、なんていうのもいずれ描かれるのかしら。

 と、少年を主人公としたバトル物、斯くあるべし的な熱さと勢い、そしてちょっとのお色気が気持ち良い作品であります。

ムシブギョー

ムシブギョー 蟲奉行 1 (少年サンデーコミックス)ムシブギョー 蟲奉行 1 (少年サンデーコミックス)
(2010/04/16)
福田 宏

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こうりゅうはようじょだった!――『イエロードラゴンがあらわれた!』1巻

 魔法使いが黄龍をペットとして召喚! しかし、黄龍は何と幼女の姿で顕現したのだった!! 更に「黄龍をペットとして召喚」するのではなく、「黄龍のペット」になる呪文だったのだ! ちなみに黄龍の部下の朱雀は雀です。

 そんな、だいぶアホな魔法使い・エンジと、ちょっとSっ気のある幼女黄龍・きみどりさんの主従関係を軸としたコメディ。

 見た目は幼女、口から吐くドラゴンブレスは寒天のようなぷるぷるした物体……なんともぷりてぃーなきみどりさんですが、そんなんでも中身は最強の霊獣なので本気になったら強いぞ、という。
 見た目相応の子供っぽさというか、世間知らずっぷりを発揮しながらも、自然にエンジを御してしまうのは、きみどりさんのスペック故か、それともエンジが阿呆なのか……。
 凄い存在に傅いているのに、見た目が幼女なせいでアレな人扱いされるエンジが哀れでもあり、それがまたおかしくもあり。そしてそれをどこ吹く風なきみどりさんがまたステキ。

 スペックの高い天然系ボケ役・きみどりさんと、いじめられ系ツッコミ役のエンジとの漫才といった感の安定感のあるやりとりから生み出される笑いが、脇役と絡んで行くことでどう変化を付けていくか。
 1巻のラストで登場したポンコツドラゴンスレイヤーのルッコラの活躍(?)に期待。 

 個人的には巨乳なもえぎさんとの絡みがもっと見たいぞ! と。

イエロードラゴンがあらわれた!

イエロードラゴンがあらわれた 1 (少年サンデーコミックス)イエロードラゴンがあらわれた 1 (少年サンデーコミックス)
(2010/04/16)
田村 光久

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漫画家煮え煮えファイト! 『西原理恵子の人生画力対決』1巻

 西原センセが他の漫画家と画力を競い合うという、もうそんなの面白いに決まってるじゃあないか! という企画。

 しりあがり寿やみうらじゅんといったサブカル枠から、藤子不二雄A、ちばてつや、やなせたかしといった漫画界の元勲、「あの人は今」枠としての江口寿史、そして福本伸行。
 などなど、錚々たる面子による漫画家としての拠って立つところのものを賭けた真剣勝負。のはずなのに、西原先生の人いじりの巧さもあって、煮え煮え具合が素晴らしい。

 作品が映画化したり、コメンテーターとしてNHKに出たり、いまやもう「文化人」枠としても名声を獲得している西原先生。そういう西原先生だからこそ実現できた企画であり、暴言もケンカの売り買いもプロレス的なものではありましょうが、いやあ、それでもやっぱり偉大な漫画家達のトホホなイラスト勝負・西原先生のつっこみの激しさには思い切り笑わせられてしまう凄みがあります。

西原理恵子の人生画力対決 1 (コミックス単行本)西原理恵子の人生画力対決 1 (コミックス単行本)
(2010/03/17)
西原 理恵子

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テーマ : オススメ漫画
ジャンル : 本・雑誌

戦争に子宮を供する女達――『WOMBS』1巻

 転送能力駆使する特殊部隊。
 それは妊娠期間中の雌だけが転送能力を持つという生物・ニーバスの体組織を胎内に宿された女だけの部隊。

 地球から遠く離れた移民星で続く第一次移民と第二次移民の戦争の中、その「子宮部隊(ウームズ)」に配属されることになった一人の女性兵士を描く。

 自分の子宮に、正体不明の生物のパーツを宿されて、その力を軍事利用される女性たち、というショッキングな設定。妊婦と戦場、縁遠い要素を密接にくっつけて、しかも説得力があるという。
 兵士として戦うことと自分の子宮に得体の知れないモノを宿すという女性としての葛藤、得体の知れない「ニーバス」の謎と、それを軍事転用する軍隊の秘密、主人公の適正の謎――などなど、ぐいぐいと先に引っ張っていく展開と設定の面白さがあります。

 一兵士として詳細は知らされないまま訓練を重ね、戦争に参加する主人公。その主人公と同等の情報量で物語を辿る読者としてはは、時折垣間見える謎と設定の面白さに目が離せません。

WOMBS.jpg

WOMBS 1 (イッキ コミックス)WOMBS 1 (イッキ コミックス)
(2010/01/29)
白井 弓子

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心だけでもない、体だけでもない問題――『セックスなんか興味ない』1巻

 「何事か」と思わせる非常にインパクトの強い、センセーショナルなタイトル。これだけでもうやられたという感じであります。。

 「セックス」を鍵にした様々な男女関係を読切り形式で描くこの作品。
 年頃の男女の恋愛話ばかりではなく、熟年の昔なじみのセックスや、美男美女同士ではない関係、同性愛者とその友人、等々バラエティに富んだ愛と肉体の関係のドラマが描かれます。
 明るい余韻の話もあり、後味の悪い話もあり、その内容は様々。どのエピソードも男と女の関係で意識しないではいられない「肉体」の問題を描写し、同時にその肉体とは切り離せない「心」を抉り出します。
 巷間でも一つとして同じ物語は存在しないであろう肉と心の関係の物語、それを生々しく、時にテクニカルに描き出す手腕はやはり凄いな、と。

 個人的にはレズビアンの恋人達とその二人に関わった男の話「志乃ちゃんの、決心」のタイトルの可愛らしさにそぐわないにエグさと、トリッキーにびっくりさせられました。

セックスなんか興味ない

セックスなんか興味ない 1 (IKKI COMIX)セックスなんか興味ない 1 (IKKI COMIX)
(2009/12/26)
きづき あきら

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空を目指す少年、という王道の物語に真っ正面から挑む――『リンドバーグ』1巻

 『ガゴゼ』のアントンシク氏の新作は、大空と少年のファンタジー。
 窮屈で息苦しい世界、そこから飛び立とうとした父親、その父の背中を追う少年、とクラシックスタイルにして王道の物語に真っ正面から挑みます。
 その王道の物語の鍵となる「リンドバーグ」という飛竜(?)。ニットが連れたプラモもこのリンドバーグであり、複葉機と竜の合いの子のようなデザインがユニーク。
 そして怪人物シャーク。ニットを外の世界へ導く兄貴役のようであり、ヤバげな雰囲気を纏い悪人のようでもあり、とクセの強いこの男がニットとプラモをどこに導いていくのか。

 空を目指す少年の王道ファンタジーと述べたので、「明るく爽やかな物語」と思われるかもしれませんが、夜郎自大な権力者達、変化の無さがもたらす小さな平和にあきらめと満足をおぼえる人々の無力感と、舞台となる小王国の閉塞感はかなりのもの。
 加えて導き手となるシャークの得体の知れ無さもあって、物語の始まりはなかなかに重苦しかったり。
 それだけに、時折ニットが感じる空への希望や、実際に空に飛びたつ際の高揚感が一層引き立っております。

 この1巻は、例えるならば滑走路を走っている飛行機がやっと地面から浮いた、そんな感じ。
 これからニットとプラモが往く空は果たして青空か、はたまた嵐の空か。

リンドバーグ

リンドバーグ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)リンドバーグ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
(2009/12/12)
アントンシク

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若さ、若さって何だ――『熱病加速装置』

 若さとは何であるか。即ち迷いである、と。
 いや、まあ、歳を食っても迷いっぱなしですけれども。

 本書はそんな若さゆえの迷いが詰まった1冊、ではないかなと。

 結婚を間近に控えた義姉と、彼女の居る義弟。暖かな家庭の中なのに、互いに微かな情欲を抱く二人の関係を描いた「てんねんかじつ」

 憧れの先生に巻いてもらった包帯。初めての恋のようなものが心に芽生えた少年が、その包帯を介して知った現実を描いた「包帯」

 ちょっと饐えた、でもありがちな家庭環境にある内気な少年。彼が出会った少女への思いと、彼の世界の閉塞感への抵抗を描いた「熱病加速装置」。

 どれも若さと、それに直結する性のもやもやから、まだまだ小さな世界の中で迷い悩む少年達の姿が描かれています。その世界は未だ小さいだけに悩みはたやすく充満して彼等を苦しめますが、その悩みを経験することで少し世界が大きくなる、という。

 どんよりと雲の立ちこめた湿度の高い夏の日、しかし、雨の後は雲の切れ間に眩しさを感じる、そんな感じがする一冊でありました。

熱病加速装置熱病加速装置
(2009/11/30)
元町 夏央

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棘叢庵主人凡鳥でございます。
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